バレエの基本姿勢で欠かせない「上体の引き上げ」。
足を軽やかに動かし体幹を鍛えバランスを保つことから、バレエを美しく踊るためには必要不可欠な動作です。しかし、「引き上げ」と言葉で言われただけではなかなかイメージが湧かず、練習してもコツが掴めない…と悩んでいるバレリーナも多いでしょう。
引き上げには普段はあまり意識しない筋肉を使うため、初めは慣れないかもしれませんが、コツさえ掴めば意識せずとも「引き上げ」ができるようになります。
「引き上げの仕方が良く分からない」
「コツを掴めない」
「ジャンプやつま先立ちが思うようにできない」
こんな方のために、バレエの引き上げの正しい方法や、分かりやすいトレーニング方法をご紹介します。
上体を引き上げる目的とは?
バレエの基本姿勢である「引き上げ」には、そもそもどのような目的や効果があるのでしょうか?
バレエでは、つま先のみで体重を支えながら、回転やジャンプ、移動をするという非常にハードな踊りです。体重が全てつま先や足首に行ってしまうと、負担が一部だけにかかり、踊りが固くなり思うように股関節を動かせなくなります。
それだけでなく、足の筋肉だけで踊ってしまうと足が太くなり怪我に繋がるかもしれません。これを防いで綺麗に踊るためには、重力に負けずに「上体を引き上げる」ことが大切です。上半身を上から引っ張られるように意識することで、足だけに負担がかかるのを防ぎ、バランスが取れやすくなるからです。
また、引き上げをすることで、疲れにくい呼吸ができ、美しい姿勢を保つことができます。
引き上げによる利点を、以下に挙げてみました。
・重心がまとまりやすくバランスがとりやすくなる
・体重移動がスムーズになる
・ポーズ間の繋がりをスムーズにできる
・動作に流れができ、美しく見える
・疲れにくく、怪我を防ぐ
バレエの「引き上げ」は、これほど重要な姿勢であることが分かります。
引き上げのコツを掴むトレーニング
上半身を上手く引き上げるためには、以下のポイントを意識して行うのが効果的です。
・腹筋を内部に絞り込む
・肋骨を開く
・肩が上がらないようにする
・顎は首に対して90度程度にする
これらの姿勢は、バレエの1番~5番のポジションを取るときにも通じるため、マスターすることで他の体の使い方にも繋がります。
「引き上げる感覚が分からない」
「何を意識したらいいのか」
このような疑問を、以下のトレーニング法で解決していきましょう。
①肋骨を開き、腹筋を絞る
引き上げの時に意識するのは、主に「肋骨」と「腹筋」です。腹筋といっても内部にある腹筋のことで、インナーマッスルのこと言います。この筋肉を意識するためには、まず仰向けになって感覚を掴むのがポイント。
以下の手順でトライすることで、「肋骨の開き」と「腹筋の絞り」の感覚が掴めるでしょう。
・仰向けで寝て力を抜く
・10秒ほど息を止める
・息を勢いよく吸う(この時に肋骨が開く)
・息を吐くときは、ゆっくり。お腹に手を当てながら腹筋をつかって内部に絞り込んでいくイメージを持つ
息を吸う時に肋骨が開き、息を吐くときに腹筋絞られている感覚が分かるでしょうか?この時使う筋肉が、「引き上げ」にも使う筋肉です。
仰向けの状態で感覚を掴んだ後は、1番のポジションでも同じ呼吸法を試してみましょう。ただし、肩や肩甲骨に力を入れず、上がらないように気を付けてください。
②背筋を鍛え、背骨を伸ばす
引き上げた体をキープして支えるためには、腹筋だけではなく背筋も必要です。バレエの引き上げには体幹が欠かせませんが、単に筋肉を鍛えるだけでは力みやすくなり、逆効果になることも。
そのため、バレエの動作に合った体幹を鍛えることが重要です。背骨を伸ばす感覚を持ちながら、頭が天井に引っ張られているようなイメージで行いましょう。
手順は以下となります。
・うつ伏せの状態から、手と膝を床に付ける(膝と床は90度になるように)
・そのまま手を前に滑らせ、体全体を引き延ばす(背骨と股関節を伸ばすイメージ)
手を滑らせる時には、足の力を使うのではなく背中の筋肉を使うように意識しましょう。
また、引き延ばすときは、背中や腰が落ちないようにキープし、背中を丸めないようにするのがポイントです。
日常生活から「引き上げ」を意識しよう
バレエの動作の中で、ジャンプやターンの時など、全ての動作に当てはまるのがこの「引き上げ」です。肋骨を開き、骨盤を上に引き上げることで、股関節や足に負担がかからず踊ることができ、足を自由に使いやすくなります。
プロのバレリーナは、この引き上げが日常から自然とできているので、バレエをしていないときでも姿勢が良く美しく見えるでしょう。
トレーニングによって引き上げのコツを掴んだら、日常生活でもこの姿勢を取り入れてみるのが上達への近道ですよ。電車に乗っている間や、順番待ち、料理をしているとき、歯を磨いているときなど。日常生活でも「引き上げ」の練習ができる場面がたくさんあります。
普段から意識することで、上体の引き上げをマスターしましょう。